「家売っちゃおうか」

マンションのローンがあと9年近く残っていてショックを受けた誕生日の1週間ほどあと、妻が外出から帰ってきて言った。
「4回のSさんち、売りにて出るよ。5080万円だって。完全リノベしてあるって。ちょっと見てみたいね。うちだったらいくらで売れるかな。思い切って、家売っちゃおうか。ローン返した残金でも郊外なら中古くらい買えるでしょ」
購入から27年、我が家より階下で同じ広さのSさんの部屋が5080万円で売りに出されているのは、意外でもあり意外では無かった。15年ほど前リハウスしようかと妻と売却を検討したことがあるが、その時は売却してローンを返済したら残金は僅かで、新規購入の頭金にもならない程度だった。しかし、昨年から都内の中古マンション価格は高騰し始め、武蔵野地区でも驚くような価格で売買されるようになったという。同じ階のKさんなどは購入時の価格と変わらぬ金額で業者に買い取ってもらったらしい。

早速私は、ネットで売却価格を検索してみた。物件情報を入力して暫くすると結果が出た。買い取り価格は、3600万円~3700万円。ローンの残額約1500万円を偏差すると残りは2000万円ちょっと、これで郊外の中古が購入できるのかな。

暫くすると、妻の携帯が立て続けに鳴り始めた。やり取りを聞いていると、不動産売買の仲介業者らしい。
「ネットでマンション売却のまとめて見積りに登録したら、電話が鳴り始めた」といっているあいだにまた電話が鳴った。結局5~6社から電話があり、そのうち3社と訪問のアポを約束した。

A社がやってきた、マンション売買の仲介業者など対応するのは初めてなのでやや警戒する。安く叩かれるんじゃ無いかと心配。A社の特徴は、買い取り部門と販売部門が完全に分離しているので、購入者の忖度無しに売り手の希望に応えられるということらしい。4200万円~4500万円の売却価格を提案される。

B社の特徴は、マンション販売会社の系列であること。マンションの購入者ニーズを的確に把握し購入希望者情報を豊富だという。「こちら、条件最高ですよ。環境もいいし、物件も築年数に比べて良好です。5000万円以上、行くんじゃ無いですか」と、ここの担当者は調子がいい。
「リノベ済みの4回で5080万円ですけど」とわたし。
「こちらの方が階が上ですし、もう景色が全然違いますよ」。4800万円スタートを提示。

C社は、以前リハウスを計画した際によく訪ねていた仲介業者で、その時は「戸建て希望低予算」にも係わらず図分丁寧に物件を探してくれた。神奈川方面の聞いたことのない街の裏手が墓地の極狭物件とか廃屋かと思うほどの中古物件とか現実の厳しさを教えてもらった。こちら4600万円スタートを提案。

仲介業者の訪問を受けているとき思い出した。そいえば息子の嫁さんの母親が、神奈川県で東急リバブルに勤めている。連絡すると、地元営業所のKさんを紹介され、数日後の訪問が決定した。

東急リバブルのKさんがやってきた。明るい笑顔でやり手そうな語り口だ。東急リバブルの売り手にも買い手にも手厚いサービスを紹介。手数料の紹介者割引もあるという。そして最新情報、階下が4900万円で売却決定したという。その上で、「早く確実に売却するなら4200万円、4400万円以上はチャレンジになります」と提案。
私たち夫婦では、最低でも4400万円以上を目指す、と決めていたので、「販売価格4480万円。4400万円まで値引き可。ではどうでしょうか」と聞くと「分かりました。それで行きましょう」と言ってくれたので、Kさんに任せることにした。
「もろもろ準備もありますので、ネットでの情報公開は1週間後くらいになります。販売開始すると、情報は公開されますし、内見希望者が次々にやってきますので心づもり願います」と言ってKさんは帰っていった。

「あ~、本当に売ることになっちゃったね」と妻。
「売れるよね。なんとしても4400万円で」と私。
マンション売却計画はスタートした。どうなる。


wani爺

wani爺自由人

1954年、信州安曇野生まれ。高校卒業後、大学進学で東京へ。50年間東京で暮らした後、安曇野に帰郷。新たな生活をスタートした。満身創痍、薬漬けの体を労りつつ明るく楽しい日々を生きる。

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